「いま資産を守るためにいちばん大切なこと 大恐慌を読み解く10の真実」増田悦佐(2012年)

 ヘタリアから、ヨーロッパやロシアに興味を持って歴史の本を読み漁ったが、その後だんだんと現代の本も読むようになってきた。

 

その中でEUの財政危機などの話が出てきたのでそっち関係も読んでみることにした。

 

最初に手にしたのはこれ。これも2012年の出版。

ブーメラン 欧州から恐慌が返ってくる

ブーメラン 欧州から恐慌が返ってくる

 

著者が欧州の「金融危機ツアー」をした記録である。

 

アイスランドさんがなぜ破綻したのか。

この例え話に出てくるのが「猫を十億ドルで売り、犬を十億ドルで買う」だ。

友人同士で、お互いに十億ドルの価値がある(と二人で決めた)猫と犬を売買しあうことで、お互いに十億の資産持ちになるというものである。

猫と犬じゃ笑い話だが、これが金融商品になると大変だ。

それまで主だった漁師という職業が、ギャンブル的な要素を持っていたから、同じくギャンブル的要素の強い(というかギャンブルそのもの)の金融に手を出したらどうなるかという。

アイスランド男の気質についても書かれていて面白い。

 

ギリシャさんがなぜやばいのか。

公務員がたくさんいて(しかも民間企業の三倍の給与)働かないなどとニュースになったが、うん、ひどい。

非効率と横領がはびこり、帳簿がない国。

帳簿もレシートもないから、税金も徴収できない。

著者は「ギリシャ人ひとりひとりはとても付き合いやすい。陽気で、温厚で、頭の回転が速く、協調性に富む」と個々人のことは褒めながら、ギリシャ人同士のお金とか資産のことについては「完全なまでの相互不信」とまで言っている。

脱税は「もはや国民性みたなもの」、「ギリシャ国民には税金は払うべきものだという意識がない。払わなくても罰せられないのだから」、こう発言するのは、しっかりと徴税しようとして降格されたという不幸な税務官である。

借金して、返せなければ踏み倒せばいい、という雰囲気の国ってすごいな。

 

そしてドイツさん。

「第四章 ドイツ人の秘密の本性」という扉ページには、こう添えられている。

危機に陥る欧州諸国の中で、ドイツだけが頼みの綱だ。ここにおいてドイツ人はギリシャ人の放蕩の付けを勤勉な自分たちが支払わなければならないのかという問いに直面する

この章は面白い。

何が面白いって、ドイツ人が「糞」の入った言葉を潤沢に使っているという記述に多くの段落を費やしていることだ。

ドイツ人の行動様式は色々研究されているらしいが、その中で人類学者ダンデスが書いた「鳥屋の梯子と人生はそも短くて糞まみれ」という本を著者が読んだらしく、ドイツの民謡や民話、ことわざ、通語などに、糞・泥・肥やし・けつへの言及が著しく多いということに興味をもったらしい。

「ぼくのかわいい糞袋」という親愛の情の表現、「わたしは熟した糞であり、世界は巨大な肛門である」「糞便に思いを馳せるのは、この上ない贅沢だ」「糞野郎」という有名人の台詞などから、「すなわち、清潔さと汚さの組み合わせだ。清潔な外面と汚い内面、清潔な体裁と汚い実情――この二律併存は、ドイツ人の国民性に深く根付いている」というダンデスの分析を載せている。

「ドイツ人は糞の近くに寄りたがるが、中には踏み込みたがらない。これこそ、現在の財政危機におけるドイツの立場の、まさに卓抜な描写だと言えないだろうか。

 

さて、欧州の中でのドイツの立場である。

簡単に言うと、踏み倒し系国家が多い中で、唯一の「借りたものはちゃんと返すのが当然」というルールで動く国だ。

ドイツ人のルール好きは聞いたことがあるが、どの本にもルールは守るのが普通で当たり前だと思っている、というようなことが書いてある。

個々人とか場面によっては違うかもしれないが、国民性として、という話である。

たぶん日本も国民性としては「普通で当たり前」と思ってる。

ドイツは日本と仲良くなればいいと思うよ。

 

ドイツといえば、ということで平行して読んでいた本を紹介。

 著者の多仁亜さんは「料理研究家。ドイツ人の母から受け継いだドイツ流の暮らし方をもとに、独自のシンプルライフを提案」している人。

インテリア・ライフスタイル系の本も多い。

上の本は著者が鹿児島に建てた家が紹介されている。

 

元の本に戻る。

ドイツの国旗を目にした通訳兼運転手の女性がこう言う。

「『愛国心は』と、シャルロッテ。『いまだにタブーなの。「ドイツ人であることを誇りに思う」という発言は、政治的公正さを欠いていると見なされる』」

図書館でドイツの歴史の棚に行くと「ホロスコート」関係の書籍がそれ以外の歴史書を圧倒している。

日本も「愛国心」が長いこと封じられてきたが、最近はだいぶ持ち直していると思う。

コレに関しては、今度この本を読んでみたいと思っている。

 内容紹介

「あなたは日本のことが好きですか?」。そう問われて「日本のことが好きだ」と言える日本人はいまや少なくないだろう。だが、ほんの少し前の時代を思い出してほしい。「愛国心」と口にしただけで「ナショナリズム」「右翼」という言葉が返されなかっただろうか。「日本はダメだ」。メディアや評論家はそう繰り返し、人びとは無意識に「日本嫌い」を刷り込まれた。どこかで自国が素晴らしい国だ、と気付いていたにもかかわらず。 

他国を見渡せばどうだろう。米国人も、中国人も、すべからく人びとは自分の国を愛し、その国民であることに誇りを持っている。そのなかで、どうして日本だけが「日本が好き」ということすら、言うことが憚れる社会であったのか。竹田氏は言う。「それは、日本を愛することが禁止されたからです。戦争に負けるというのは、そういうことなのです」。
amazonの紹介文より抜粋)

 

愛国心とかそういうのの間違った例として「ネオナチ」なんかがあるが、日本でスキンヘッドしてもなんとなくお坊さんな感じになるのではないかと思う。

スキンヘッド (Skinhead) は、反体制的な思想を持ち、意図的に剃髪した団体のことを指す[1]。但し、日本においては単に頭髪を全て剃り上げた流行のスタイルおよびその「頭」の意味で用いられることも多いが、英語本来の意味とは異なる誤用で、単に悪口でハゲと言う人もいる。

もともとこの髪型は黒人運動や反体制の象徴であったが(SHARPRASHARAといった団体がこれらを継承させている)、異民族に暴力行為を働くネオナチにこのスタイル(+野戦服の上着にジーパン姿、靴は軍用半長靴)を好む者が多いため、近年では極右ネオナチのシンボルとされている。こうした若者集団を「スキンヘッド(skinhead)」(複数形でスキンヘッズ skinheads)と呼ぶ。

スキンヘッドするより、みんなでティアンドル着ればいいのに!

 

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で。

 この本は最終章を「第五章 あなたの中の内なるギリシャ」として、ブーメランが帰ってくる先、つまりアメリカについて書いている。

小見出しを抜き出してみるとこうだ。

 アメリカも既に大変なことになっている。

以前からアメリカの貧困問題については話題になっているが、それにしても公共のものまで運営できなくなるほどとは、ひどい。

 

読んだことのあるアメリカの貧困の話はこれ。

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

 

 あとこっちも。

ニッケル・アンド・ダイムド -アメリカ下流社会の現実

ニッケル・アンド・ダイムド -アメリカ下流社会の現実

 

 

ついでに日本の貧困問題の本もついでに貼っておく。

 貧困にある子どもの教育をなんとかしたい。

子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)

子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)

 

 

ということで、上の本は読了。

本が2012年以前とかちょっと古くて、今現在の状況とは変わっていると思うので、そのうちもう少し新しい本を探して読むつもり。

 

 

さて、タイトルの本にとりかかる。

いま資産を守るためにいちばん大切なこと―大恐慌を読み解く10の真実
 

 先ほどの本は欧米人の書いた欧米の本だが、

これは日本人が書いた本である。

欧米に対して辛辣で、日本が好きなんだろうなという本。

でも面白かった。

はじめに、にはこうも書かれている。

知的エリートにいいように引きずり回されている欧米諸国と、知的であるはずのエリートが無能なのでうまくいっている日本との対比も考える。(p2)

 ユーロ圏については「まちがいなく解体する」と断言。

どの本もそんなことを書いているので、今後どう動いていくかは注視に値するだろう。

自分たちの稼ぎよりぜいたくな暮らしをすることで赤字続きになっている国が、その赤字のツケを自分達の稼ぎよりつつましく暮らしている国に払わせれば世の中はうまくいくという、おそろしく身勝手な主張だ。他国の負担で棒引きにすることができるとなれば、経済力の弱い国はまっしぐらに借金の拡大に走るだろう。(p15)

 ドイツさん……

 

そして繰り返し述べられるのがヨーロッパ人に根付いている考え。

ヨーロッパ人には、「自分たちこそ全世界のご主人様で、他国の連中は下男下女にすぎない」と思い込んでいる連中が多い 

 とか、

 第二次世界大戦後、植民地の大半を失ったヨーロッパ諸国の国際経済における地位は大幅に低下した。当たり前だ。植民地の利権と、その利権がもたらす金利収入で、「利口な人間は手を汚さずにぜいたく暮らしができる」という人生を、約一〇世代二五〇~三〇〇年にわたって送りつづけていれば、もともとはそうとう実直で勤勉な連中だったとしても、芯から腐っていく。その利権の源泉を取り上げられてしまえば、落ちぶれるのが当然なのだ。

 だが、彼ら高慢が身についてしまったヨーロッパ人の描く自画像は、まったく違う。「自分たちは、天然自然に賢く生まれてついているから、アジア・アフリカ・中南米の人間が汗水たらして働いてもできないような生活を、遊び半分仕事半分で十分やってのける能力がある」という思い込みを疑うこともなかったのだ。彼らは、植民地利権の低下が当然惹き起こすはずの生活水準の低下を、すなおに自分たちの実力を示すものとしてうけいれなかった。(p23) 

 とか、そんな感じ。

イタリアでの個人的な体験も述べられていて、よっぽど頭にきてるのかもと思う。

ただ確かに、これだけ「グローバル化」とやらが進んだら、知識とか技術力とかの差がつきにくくなってくると思うので、収入や暮らしのレベルが世界の平均値あたりに集まっていくのは仕方がないだろう。

 

で、日本については、臆病で、上が無能だからこそ安定しているという。

識者とか、評論家とか呼ばれる無責任な連中は、海外との資本取引の少なさを、日本人の勇気や想像力の欠如の証拠ででもあるかのように言い立てて、「もっと投資を増やせ。国内ばかりじゃなく、海外にも投資せよ。海外からの投資も呼びこめ」と主張しつづけてきた。勇気や想像力のあることを示すために大損するのと、臆病とか想像力がないとか言われてもきちんと資産を守るのとどちらがいいか。結論は明らかだろう。(p21-22)

 

上が有能というのは、一部の「知的エリート」だけが稼げる形が維持されることだ。

今読んでいる本には、アメリカではその一部の人たちがどれだけお金を持っているかということが書かれている。

僕たちが親より豊かになるのはもう不可能なのか 各国「若者の絶望」の現場を歩く

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 エマニュエル・サエズらによる最新の調査によると、二〇一二年には、所得者の上位10%(年収11万4000ドル以上)が、アメリカ全体の所得の半分以上を手にしている。過去最高の割合である。また、所得者の上位1%が、アメリカ全体の所得の五分の一以上を受け取っている。これもまた、世界恐慌以来最高の値である。さらに、この上位1%が高額所得を維持する確率は、一九七〇年代以来ほとんど変わっていない。

この上位1%とかが政治とか経済とかそういう社会を動かしているので、動かないのは当たり前か。

また、

ピュー慈善財団が行った最近の調査によれば、アメリカの所得者の下位20%に属する家庭に生まれた人の70%は、中流階級にはい上がることができない。

財団は、アメリカの家庭の40%が三週間分の収入に匹敵する貯金さえないと述べ 

 ともある。

 

で、元の本に戻る。

この本では日本の高齢化についても、わりと肯定的な見方をしている。

「若年層人口が多いときのほうが経済成長率は高い」という議論は、貴重な資源としてなるべくすくない量を有効に使うべき労働力を、なるべく安く大量に使いたいという、雇う側の理論、それも凡庸な経営者の論理丸出しだ。

 高齢者人口の多い国というのは、人生をフル稼働した人が多い国ということだ。逆に、高齢者が少なく、若年層人口が多い国というのは、乳幼児で間引かれ、青年期で間引かれ、壮年期で間引かれといった具合に、天寿をまっとうできない人が多い国だ。どちらのほうが経済効率がいいかは、わかりきっている。

 さらに、どんなものでも、量が少なければ貴重だということで大事に使われるし、量が多いものはぞんざいに扱われる。これは、いま先進諸国でも最速の高齢化真っ最中の日本で現実に起きていることだ。日本は一般論として失業率が低いだけではなく、章しかで希少価値の高まっている若年層の失業率が、欧米諸国と比べて圧倒的に低い。(p85-86)

 

そして、日本の悲観的な報道については、”日本ダメダメ教”に洗脳された老害知識人の繰り言とばっさり。

 

本書を全面的に支持するかどうかはもう少し知識をつけてからにしたいが、日本のことが好きな私としては、こういう本は読んでて嬉しい。

 

最後に、この本のタイトルになっている、「資産を守るためにいちばん大切なこと」が何かというのは、本を読んで頂きたい。

ネタバレは好かれないと思うのでここは濁しておくが、こういう本を読んでみるのも楽しいのだなぁと、改めて読書の楽しみをかみ締めたのであります。

 

 同じ著者の他の本も読んでみるかなー。

99%の国民が泣きを見る アベノミクスで貧乏くじを引かないたった一つの方法

99%の国民が泣きを見る アベノミクスで貧乏くじを引かないたった一つの方法

 

 

20140611追記

 あと、悲観論の本も読んだので、あまり面白くないけど紹介。

日本は赤字国家に転落するか

日本は赤字国家に転落するか

 

 日本の問題としているのは、

・産業の空洞化(一度工場が海外に移転しちゃうと国内に戻ってくるのは無理、不可逆)

・デフレからインフレ、円高から円安というようなあれこれで大変

・高齢化・設備資本の老朽化(工場とか新しく建たないなど)・技術革新の低下などで供給力が下がること

で、再生には何が必要かというと、

供給力を低下させない為には、高齢化に対しては「外国人労働者在留資格制限の緩和」「女性の労働参加率向上」、設備資本ストックの老朽化については「円高圧力への対抗」「海外に移転しないように法人税減税の実施」「公共インフラの拡充」、技術革新力については空洞化が阻止できれば、国内に技術者が留まるというのがメイン。

 

 

もう、お金を持ってる人に自動的にお金が集まる仕組み(貸したら利子がつくし、投資すれば利益がある)になってるんだから、「お金」から卒業するしかないのかもしれない。

これだけ家電に囲まれながら書くのもなんだが、アーミッシュの暮らしを見習うしかない。

 

生活

アーミッシュは移民当時の生活様式を守るため電気を使用せず、現代の一般的な通信機器電話など)も家庭内にはない。原則として現代の技術による機器を生活に導入することを拒み、近代以前と同様の生活様式を基本に農耕牧畜を行い自給自足の生活を営んでいる[5]。自分たちの信仰生活に反すると判断した新しい技術・製品・考え方は拒否するのである。一部では観光客向け商品の販売などが行われている(アーミッシュの周辺に住む一般人が、アーミッシュキルト蜂蜜などを販売したり、アーミッシュのバギーを用いて観光客を有料で乗せたりする例もある)。

基本的に大家族主義であり、ひとつのコミュニティは深く互助的な関係で結ばれている。新しい家を建てるときには親戚・隣近所が集まって取り組む。服装は極めて質素。子供は多少色のあるものを着るが、成人は決められた色のものしか着ない。洗濯物を見ればその家の住人がアーミッシュかどうかわかる。

 

アーミッシュの日常生活では近代以前の伝統的な技術しか使わない。そのため、自動車は運転しない。商用電源は使用せず、わずかに、風車水車によって蓄電池に充電した電気を利用する程度である。移動手段は馬車によっているものの[5]ウィンカーをつけることが法規上義務付けられているため、充電した蓄電池を利用しているとされる[6]。しかし、メノナイトは自動車運転免許を持つことが許されており、家電製品も使用している。

アーミッシュは現代文明を完全に否定しているわけではなく、自らのアイデンティティを喪失しないかどうか慎重に検討したうえで必要なものだけを導入しているのである[7]

 

アーミッシュ - Wikipedia

 

でも、ネット環境がないと生きていけないでござる。

“シンプル”という贈りもの―アーミシュの暮らしから (クロニクル・ブックス)

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